「これじゃダメや!俺がヨーロッパに行ってくる」
佐賀工房で採用した企画女子が神戸に赴任してきた。Kちゃん。
私より10歳近く下だが、明るくてとても可愛い。
私にはないアートな感性や絵の上手さ、そして丸々天然ということもありすぐに馴染んでくれた。
その女子を育てたいということで、企画パタンナーの男性スタッフと二人でヨーロッパ出張に行かせることとなった。
しかし当然の事ながら慣れない二人。
なかなかサンプルも数足しか買えずに帰ってきた。
会長が買ってきたサンプルを見て発したコトバがこれ。
「これじゃダメや!俺がKを連れてもう一回行ってくる!」
二人が戻ってきて約3週間も経たない内に、再びKちゃんを連れてヨーロッパへと旅立った。
この決断力と行動力!
これが会長の魅力だ。
でも私は過去の苦い経験から、Kちゃんに会長との出張時の注意事項を伝授した。
残念ながら無駄に終わったようで、やはり苦い思い出を作って帰ってきた。
でもそれを元気に明るく報告してくれるあたり、うん、頼もしい後輩ができて良かった良かった。
しかもサンプルは30足ほど買ってきて、すごく勉強になったみたい。
やはり会長の靴に対する熱量は半端ないな、と改めて気づかされた。
この出張を機に、私自身の中で何かが変わりはじめた。
そして会長の思惑も別のところにあることにはまだ気づいていなかった。
・・・つづく
神戸こぼれ話
「これはフグ刺しやない!」
年末年始は私もKちゃんも福岡の実家に帰り、会長も佐賀に行っていた。(もちろん車で)
そこで思い付いたのが、3人で船で門司港から神戸港まで行こう、そして食べ物を持ち込み、会長の部屋で宴会をしよう!という素敵なプラン。
初の船旅は楽しい宴会つきだぁ!
私とKちゃんは待ち合わせをしてお買い物。
会長からは「ふぐ刺しは必ず買っといてくれ」とのお達し。
北九州のデパ地下ならふぐはあるだろうと、会長に事前に頂いた軍資金を手にショッピング開始。
私の中では「ふぐ」と名の付くものであれば良いくらいの知識で買ったものだから、いざ食べようとすると会長から出たコトバがこれ。
「これはふぐ刺しやない!カナトふぐや!」
会長の中では「ふぐ刺し」というのは「とらふぐ」だけらしい。
知らんがな。かなとでも、ふぐですやん。
ふぐに関しては狭量なんだからぁ。
それからしばらくの間、「安藤からカナトふぐを食べさせられた」と言ってはいじられる日々が続いた。